この記事のまとめ
- ROASの目安に「業界共通の正解」はない。講座の単価と成約率で回収ラインは変わる
- 無形商材スクールの場合、ROAS 300%が損益分岐の目安。ただし単価が高いほどこの数字は下がる
- アウメンタが支援した14社の実測ROASは440%〜1,287%。同じ広告費でも3倍近い差が出る
- 差を生んでいるのは広告の巧拙ではなく、広告→LP→LINE→成約の導線のどこで漏れているか
- ROASが低いときに見るべきは広告の管理画面ではなく、登録率・参加率・成約率の3つ
「うちのROAS、300%なんですけど……これって良いんでしょうか、悪いんでしょうか」
講座やスクールを運営している方から、この質問を本当によく受けます。
数字は出ている。
でも、その数字が良いのか悪いのか、判断する基準がない。
検索してみても出てくるのはECサイトや BtoB SaaS の話ばかりで、自分の事業に当てはめられない。
僕はこれまで14社以上のスクール・講座・コーチング事業者の集客を支援してきました。
その実測データを並べると、ROASは440%から1,287%まで、3倍近いばらつきがあります。
同じくらいの広告費を使っていても、です。
この記事では、そのばらつきがどこから来ているのかを、実際の数字を開きながら説明します。
結論から言うと、差を生んでいるのは広告の運用テクニックではありません。
この記事は「ROASの目安は◯◯%です」という一行の答えを出す記事ではありません。あなたの講座の単価と成約率から、あなた自身の回収ラインを計算できるようにするための記事です。
ROASの目安はいくつ?──「何%か」より先に決めるべきこと
ROAS(Return On Advertising Spend)は、広告費に対して売上が何倍になったかを示す指標です。
広告費100万円で売上400万円なら、ROASは400%になります。
まず、よく見かける「ROASの目安は◯◯%」という数字について、はっきり言っておきます。
無形商材のスクールや講座には、業界共通の目安は存在しません。
理由は単純で、回収ラインが講座の単価と原価構造で変わってしまうからです。
ROAS 300%でも赤字になる事業、200%でも黒字になる事業
たとえば、原価率が7割の物販でROAS 300%だと、ほぼ利益は残りません。
一方、講座は在庫を持ちません。
講師の人件費とプラットフォーム費用が主な原価なので、原価率は物販よりずっと低くなります。
そのぶん、同じROASでも手元に残る額が違ってきます。
つまり、ROASの目安を他業種から借りてくること自体に無理があります。
検索して出てくる数字が自分に当てはまらないと感じるのは、正しい感覚です。
「ROASの目安は何%ですか」と聞かれたら、僕はまず「講座の単価はいくらですか」と聞き返します。単価を知らずに目安だけ答えるのは、体重を聞かずに「あなたの適正体重は60kgです」と言うのと同じです。
自分の回収ラインを出す計算式
難しい計算は要りません。
以下の3つが分かれば、あなたの損益分岐ROASは出せます。
- 講座の販売単価
- 1件あたりの提供原価(講師の時間、教材、決済手数料など)
- 広告以外の固定費(月額ツール、外注費など)
ざっくりした目安として、粗利率が7割の講座なら、損益分岐ROASは約143%です。
粗利率が5割なら200%。
ここに固定費と、自分の人件費を乗せて考えます。
実務上は、ROAS 300%を最低ラインに置くのが現実的です。
広告費が回収できて、なおかつ次の月の広告費に再投資できる余力が残るのがこのあたりだからです。
無形商材スクールのROAS実測値──14社のデータを開きます

ここからは、実際に支援した案件の数字を出します。
匿名にしていますが、いずれも無形商材のスクール・講座・コーチング事業者です。
| 案件 | 広告費 | 広告経由売上 | ROAS |
|---|---|---|---|
| A社(養成講座) | 2,267万円 | 8,210万円 | 440% |
| B社(コーチング講座) | 720万円 | 3,654万円 | 507% |
| C社(スクール) | 169万円 | 1,034万円 | 612% |
| D社(スクール) | 30万円 | 383万円 | 1,287% |
14社全体の平均ROASは709%です。
ただ、この「平均709%」という数字を、あなたの目標に設定しないでください。
表を見てもらうと分かる通り、実態は440%から1,287%まで散らばっています。
平均値は、この散らばりを見えなくしてしまいます。
注目してほしいのは、広告費が最も少ないD社(30万円)のROASが最も高く、最も多いA社(2,267万円)が最も低いことです。広告費を増やすほどROASは下がります。これは失敗ではなく、正常な挙動です。
広告費を増やすとROASが下がるのはなぜか
広告は、最初に「最も反応しやすい層」から配信されます。
予算を増やすと、配信先が徐々に広がっていきます。
反応が薄い層まで届くようになるので、1件あたりの獲得単価は上がり、ROASは下がります。
だから、月30万円でROAS 1,287%が出ていた事業者が、月300万円に増額して同じROASを維持することはまずありません。
ここを理解していないと、「代理店を変えたら数字が落ちた」と誤解することになります。
落ちたのは運用の質ではなく、規模を変えたからです。
\ 自分の数字が良いのか悪いのか、判断できないままにしない /
あなたの講座の単価から、適正な回収ラインを一緒に出します
無形商材スクールに特化して14社以上を支援してきた実データをもとにお話しします。
なぜ同じ広告費でROASが3倍変わるのか

広告費の規模だけでは、440%と1,287%の差は説明しきれません。
実際には、規模が近い案件どうしでも差が出ます。
ここが本題です。
ROASの差の大半は、広告の外側で生まれています。
ROASは掛け算の結果でしかない
無形商材の講座では、広告をクリックした人がその場で買うことはほとんどありません。
実際にはこういう順番をたどります。
- 広告をクリックする
- LPを読む
- LINEに登録する
- ステップ配信を受け取る
- 説明会やセミナーに参加する
- 個別相談に進む
- 申し込む
ROASは、この各段階の通過率をすべて掛け算した結果です。
どこか1箇所が半分になれば、最終的なROASも半分になります。
広告の管理画面には、この途中経過が映りません。
僕が「広告は蛇口、導線はバケツ」という言い方をよくするのは、このためです。
バケツに穴が空いていれば、蛇口をひねっても水は溜まりません。
ROASが低いという症状は、たいてい広告ではなくバケツ側の問題です。
実際に効いた箇所
先ほどのB社(広告費720万円・ROAS 507%)では、個別相談からの成約率が42.3%でした。
これは、広告を触って上がった数字ではありません。
LINE登録後のステップ配信で、何を、どの順番で伝えるかを組み直した結果です。
仮にこの成約率が20%だったとすると、他の条件が同じでもROASは半分以下に落ちます。
広告費も、クリック数も、LINE登録数も同じままで、です。
ROASを上げたいという相談を受けたとき、僕が最初に広告アカウントを開くことはほとんどありません。先にLPとLINEのシナリオを見せてもらいます。9割はそこに原因があります。
【要:一次情報】ここに、B社のステップ配信を具体的にどう組み替えたか(配信通数・順番・何を先に伝えたか)を2〜3行で入れる。改善前後の成約率が出せるなら数字も。
ROASが低いときに見る3つの数字

広告の管理画面をいくら眺めても、原因は見つかりません。
代わりに、以下の3つを出してください。
1. LINE登録率(LPを見た人のうち、何%が登録したか)
ここが低いと、その後の全段階に影響します。
広告費をいくら積んでも、入り口で漏れているからです。
アウメンタが支援した案件では、LP・LINE導線を組み直して登録率78.8%まで持っていったケースがあります。
LPのゴールを「申し込み」ではなく「LINE登録」の一点に絞ったのが、いちばん大きな変更でした。
2. 説明会・セミナーへの参加率(登録者のうち、何%が来たか)
登録は増えているのに売上が伸びない、という相談はここが原因のことが多いです。
登録直後の数日で何を送るかで、参加率は大きく変わります。
【要:一次情報】14社の参加率のレンジ(何%〜何%だったか)を入れる。出せない場合はこの段落を削除する。
3. 成約率(相談まで来た人のうち、何%が申し込んだか)
ここが低いと、多くの方は「自分のセールストークが下手だから」と考えます。
でも、実際には相談に来る前の段階でほぼ決まっています。
何を期待して来たのか、どこまで理解して来たのか。
それを作るのはステップ配信の役割で、当日のトークではありません。
この3つを掛け算した数字が、そのままROASの正体です。
どこが一番低いかを見れば、次に手を入れる場所が決まります。
ROASを目標にすると、かえって失敗するケース

最後に、注意点を1つ。
ROASだけを追いかけると、事業が縮みます。
ROASを最大化したいなら、広告費を絞るのが一番手っ取り早い方法です。
反応の良い層だけに配信すれば、数字は跳ね上がります。
先ほどのD社(月30万円・ROAS 1,287%)が、まさにその状態です。
ただ、それで得られる売上は月383万円が上限になります。
一方のA社はROAS 440%と低いですが、売上は8,210万円あります。
ROASが高いことと、事業が伸びていることは別の話です。
見るべきは、ROASと売上の両方です。ROASが損益分岐を超えているなら、次に考えるのは「ROASをもっと上げること」ではなく「ROASを維持したまま、どこまで広告費を増やせるか」です。
回収できる構造さえできていれば、広告費は増やすほど利益額が増えます。
逆に、構造ができていないうちに増額すると、損失が増えるだけです。
順番を間違えないでください。
まとめ
ROASの目安について、この記事でお伝えしたことを整理します。
- 業界共通の目安は存在しない。講座の単価と粗利率から自分で計算する
- 実務上はROAS 300%が最低ライン。粗利率7割なら損益分岐は約143%
- 支援14社の実測は440%〜1,287%。平均709%を目標にしない
- 広告費を増やせばROASは下がる。これは失敗ではなく正常
- ROASの差は広告ではなく、登録率・参加率・成約率の掛け算で決まる
- ROASだけを追うと事業が縮む。回収できる構造を作ってから増額する
もし今、自分のROASが良いのか悪いのか判断できずにいるなら、まず講座の単価から損益分岐ROASを出してみてください。
そこを超えているなら、次にやるのは広告の微調整ではなく、導線のどこで漏れているかを特定する作業です。
その特定作業だけ外から見てほしい、という段階でしたら、個別にご相談ください。



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